就活は恋愛と同じ!?そんなわけない?会社実務×弁護士×労働法理論で解説【カオスな就活】

記事を手に取っていただきありがとうございます!
労働法研究者・弁護士のこたつの中の人です。

たまに「恋愛と就活は同じ」みたいな言われ方をすることがある気がします。
特に、「雇う側の人」がそういう発信をしていることがあるのではないかと。
かくいう私も、そのことは否定していないというか、似ている部分も確かにあるなとは思っています。
でも、もちろん、明確に違う部分もあります。

この記事では「就活と恋愛」の共通点と相違点を、法学的に説明しようと思います。
就活も法のルールに基づいて行われていることは間違いないので、絶賛就活中の方、これから就活する方、雇う側の方、就活に関わる誰かの助けになれば幸いです。

※記事を更新した時点での一般的な内容・知見に基づいており、閲覧された時点によっては情報が古くなっている可能性があります。また、具体的な事情や状況も一人一人異なります。そのため、この記事は勉強や参考としてご覧いただき、実際に行動を起こされる際には弁護士等に具体的にご相談ください。
※この記事の内容は、著者個人の見解であり、著者が所属する(あるいは過去に所属していた)機関とは無関係です。

目次

就活のゴール

就活のゴールはなんでしょう?
言い換えると、就活はいつ終わるのでしょう?

色々な回答があると思いますが、シンプルにするとこんな感じだと思います。

就活する人→入社する会社が決まる
企業→必要な数の新入社員を獲得する

就活生からすれば入社する企業を最終的に1社に絞るわけですが、企業の場合、複数名採用することが一般的です。
ゴールにはその違いが現れています。

ただし、これはあくまで数の違いであって、法的な本質は同じです。

企業への入社(企業側から見れば採用)は、法的には、労働契約という契約の締結を意味します。
そのため、入社する際に、労働契約書(雇用契約書)という名前の書類にサインすることになります。

就活と恋愛の共通点

就活のゴールを踏まえて、恋愛との共通点をまとめてみます。

共通点

①応募する企業は自由に選べる(企業側もスカウトする就活生を自由に選べる)

②入社・採用は、企業と就活生の合意によって起こる

③入社・採用に理由はいらない

まず、①。
これは恋愛に例えると、「誰を好きになってもいい」ということでしょうか。

家族や友人など、周りの人はもしかしたら「そんな人やめときなよ」と言うかもしれません。
「なんであの人じゃないの?」とか「好みのタイプと全然違くない?」とかも。

でも、自分が働きたいと思えば応募すればいいんです。
そこは自由。

次に②です。

応募して、いよいよ入社すると決めるとき、自分だけが相手を好きでも入社できません。
恋愛でも、付き合うためには自分のことを好きになってもらってないとダメですよね。

逆に、採用に必要なのは自分と企業の「入社したいです・わかりました採用します」の合意(OK)だけということです。。
恋愛でいえば、「付き合ってください」「わかりました」で付き合うことになるのと同じ。

ここは最後の③とも関係しますが、最も恋愛と似ているポイントだと思います。
合意に理由はいらないのです。

つまり、どこに入社するか、誰を採用するか…そこに理由は必要ありません。

恋愛でも同じ。相手を好きだということに理由はいらない。

付き合いたいと思えば付き合えばいいし、付き合いたいと思わなければ付き合わなければいい。
付き合いたいと思ってなくても付き合ってもいいし、付き合いたいと思っていても付き合わなくてもいい。
(それぞれどういう状況でしょう。頭の体操みたいになってしまった…)

これはねー…実は結構しんどいポイントだと思います。
そう思う理由は最後に説明します。

就活と恋愛の相違点

言ってしまえば共通点以外はほとんど全部違うと思うのですが、メインどころはこんな感じかなと。

相違点

①同じタイミングで何社応募してもいい

②雇う側は複数人採用する

③法律による一定のルールがある

④内定というあいまいな期間がある

まず、①ですが、あくまで一般的な恋愛ということでお許しください。

就活では、多くの場合、複数の企業に応募すると思います。
恋愛に例えるならば、誰かに「付き合ってください」と申し込んで、その結果が出ないうちに他の人にも「付き合ってください」と言っているような状況です。
それが違法だ!というつもりは全くないのですが、一般的な恋愛の形ではないかな…と思います。

次に②です。これも「一般的な」ということでお願いします。

今度は企業側に目を移しますが、企業は一般的に、複数人を採用します。
企業は「何人採用するかを自由に決められる」のです。

一人しか採用しないということも企業規模等によってはあると思いますが、新卒採用を定期的に行なっている企業であれば、一人というのはあんまりないと思います。
恋愛に例えるとすると、複数人と同時に付き合うという状況で、やはり一般的ではないと思います。

これは、就活のときは自分と会社の一対一の関係だったのに、入社すると集団に放り込まれるということでもあります。
その影響については後でまたお話しします。

③は当たり前かもしれませんが、例えば性別による差別の禁止など、特に採用する側にとって守らなければならないルールがあります。

最後の④です。

頑張って選考をクリアすると、多くの場合、採用ではなく「内定」という状態となります。
内定については別の記事で説明しますが、ざっくりというと、学校卒業まで働き始めるのを待っている状態とイメージしておいてください。

「採用は採用なんだけどまだ学生で学業が本業だから、卒業したら実際に働き始めてくださいね」ということです。

なので、もし学校を卒業できなかったりすると、内定を取り消す(内定取消)みたいなことになるわけです。

これは恋愛で言うならば、「とりあえずOKするけど、悪いところがあったら別れるからね」とお試し的に付き合う感じでしょうか。

ないわけでもないような気もするので④にしてみましたが、いかがでしょう…?

法律的なポイント

就活と恋愛の比較をしてみましたが、どう感じましたか?
「恋愛と同じところがある」と言われると、「就活ってなんて難しいんだ」と思った方もいるのではないでしょうか。

その難しさの大部分は、企業は誰をどんな理由で採用してもいい、ということにあると思います。

これは、法律的には契約の自由といい、採用のときには特に「採用の自由」と呼ばれます。
入社=労働契約の締結だったので、契約を結ぶかどうか、誰と結ぶかなどについて、企業も就活生も自由だという法律のルール(契約の自由)が適用されるということです。

これ、採用されるときにはまぁいいのですが、不採用のときには困ります。
採用に理由はいらないということの裏返しで、不採用にも理由は必要ありません
※差別的な理由で不採用とした場合など、違法となることもあります。ただし、その場合でもその企業に入社できるとは限らず、基本的には損害賠償というお金での解決となることが多いです。

当然、不採用の理由を教えてくれるわけではありませんし、仮に就活生から企業に尋ねて教えてくれたとしても、当たり障りのない回答となってしまうことがほとんどでしょう。
企業側には不採用の理由を伝える義務がないので、教えてくれる企業はかなり誠実ともいえます。

つまり、採用されるかどうかはその企業や採用に携わる人との相性にかなり左右されるということです。
もちろん、一定の採用基準を設けて、その基準をクリアしたか否かで採用を判断している企業もたくさんあります。
しかし、例えば一般の大学入試のような、問題が解けたかどうかで点数が決まるようなシンプルな基準ではないでしょう。
人が人を選ぶのですから、どうしても抽象的であいまいな基準が残ってしまいます。

加えて、基準に当てはまっているかを判断するのも人です。
複数回あるとはいえ、短い面接でその人が自社で活躍するかを見極めているわけですから、そこには面接担当の方の感覚も少なからず入ってしまいます。

このような仕組みが悪いというわけでもありませんし、複数人でチェックするなど、ミスマッチが起きにくいように企業側も精一杯工夫をしています。
ただ、どうしても、就活というのは「合う合わない」という要素で合否が決まってしまう部分があるということを知っておいてほしいのです。

そして「合う合わない」を決めるのは「採用の自由」を持っている企業側なのです。
恋愛でいえば、告白する側が弱いということですかね。
告白した時点で、相手に選択肢が生まれるわけですから。
でも、告白しないと始まらないんですよね…。

恋愛話をまた出してしまった…。

元に戻すと、もし就活で落ちてしまったとしても、能力や人格を否定されたわけではなく、ただ「合わなかった」のだと切り替えて「合う企業」を探してほしいと思うのです。

なお、契約の自由は一応、就活生側にもあります。
しかし、まず就活生が応募する企業を選んでエントリーするという就活のシステム上、契約の自由によるメリットを受けるのは企業側でしょう。
応募に対して企業が内定を出した時点で労働契約が結ばれるというのが一般的なので、就活生には、「その企業との契約を断る」という選択をする場面がないからです。
※内定を辞退するということはもちろん可能です。ただ、それは、法的には契約が結ばれた後の話です。そのため、「誰と契約するか」というよりは「始まった契約を終了させる」自由という意味合いが強いです。つまり、退職する自由ということです。退職するにも理由は不要ですので、内定辞退は基本的に就活生の自由に行うことができます(悪質な場合はペナルティがあることも)。

入社後のポイント

就活のときは自分対企業の一対一の関係に近かったのが、入社すれば、同期がいて、先輩がいて、上司がいて…企業という組織に加入したことを実感すると思います。

入社=労働契約の締結と言いましたが、契約というのは基本的に一対一の関係です。
労働契約の場合、従業員と企業の一対一ということです。

ですが、企業という組織には自分と同じように労働契約を結んで働いている人がたくさんいます。
同期で入社した人はもちろん、先輩や上司もそうです。
従業員と企業の一対一の関係が同時にたくさん存在している、これが企業に入って働くときの状況なのです。

付き合った後は一対一の関係が進展していく恋愛とはかなり違います。

企業は従業員を集団的に、組織としてマネジメントしなければなりません。
そうやって製品を生産したりサービスを提供したりして利益をあげていくわけです。
従業員一人一人がバラバラに動いていたのでは効率も悪いし、新しいことを行うエネルギーも小さくなる。
何人も雇っている意味が減ってしまいます。

そして、企業はそのための法律的な権限を持っています。
転勤させたり部署異動させたりというのはその典型的な例です。

従業員はその権限に基本的には従わなければならない。

付き合った後は対等な関係だと思いますが(一般的には)、でも、企業で働くときにはなかなかそうはならない。

もちろんそれが悪いわけではないのです。
企業で働くというのはそういうことで、それによって自分で仕事を探す必要がないとか、いいこともあるし。

でも、就活のときと入社後ではガラッと変わるからこそ、自分がなぜ採用されたのかを知っておくことも重要だと思うのです。
どういうところが評価されて、どういう活躍が期待されて採用されたのか。
知っていると得意が伸ばしやすかったり、苦手克服のモチベーションになったり、集団の中で生きていきやすくなるのではないかと。

法律で理由の開示を強制することは難しいですが、コミュニケーションとしてあれば素敵と思う今日この頃です。

最後まで読んでくださりありがとうございます!
何かの役に立っていれば嬉しいです。

こたつの中の人
弁護士です。労働法研究者(博士号持ち・大学に在籍中)でもあります。コンサルティング会社に社内弁護士として勤務したこともあり、企業の人事・労務に関する相談を2000件以上受けてきました。企業の気持ちを理解しつつ確かな理論を示して、会社の「雇う力」と働く人の「満足」を追求する「Quality of Work」向上を支援しています。
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