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労働法研究者・弁護士のこたつの中の人です。
ふつうの企業でヒラ&管理職として働いた経験もあり、働く人の目線×企業経営の視点×専門先端の知見を使った記事を発信しています。
この記事では、例えば、社会保険労務士の方・目指されている方、企業の人事担当の方向けに、「AI時代の人事労務」と大仰な名前を付けて労働に関する理論の説明や考察をしています。
AI時代の人事労務がどうなっていくかなんて私にわかるわけがないのですが、わからないなら考えようということで、ぜひ、一緒に考えてくださると嬉しいです。
本日のテーマは、「AI時代にどうやって人事労務に携わるか」です。
知識や経験をどうやって仕事にするか、と言い換えてもいいと思います。
すでに考えておられる方も多いかもしれませんが、参考になれば嬉しいです。
※ここから先はできるだけ正確に書くために「である調」にしています。偉そうになってしまうのですが、苦手な方ごめんなさい。
※記事を更新した時点での一般的な内容・知見に基づいており、閲覧された時点によっては情報が古くなっている可能性があります。また、具体的な事情や状況も一人一人異なります。そのため、この記事は勉強や参考としてご覧いただき、実際に行動を起こされる際には弁護士等に具体的にご相談ください。
※この記事の内容は、著者個人の見解であり、著者が所属する(あるいは過去に所属していた)機関とは無関係です。
AI時代とは?
まず、AI時代としてどういったものを想定するかを決めておく必要があるが、AI時代の定義として「AIが産業や社会の広い場面で使われるようになる時代」といった抽象的なもの以上は、現時点では決められないように思われる。
そこで、少し古いが、第4次産業革命という言葉の意味を借りてみたい。
「第4次産業革命とは……次のような幾つかのコアとなる技術革新を指す。
一つ目はIoT及びビッグデータである。……様々な情報がデータ化され、それらをネットワークでつなげてまとめ、これを解析・利用することで、新たな付加価値が生まれている。
二つ目はAIである。人間がコンピューターに対してあらかじめ分析上注目すべき要素を全て与えなくとも、コンピューターが自ら学習し、一定の判断を行うことが可能となっている。……。
こうした技術革新により、①大量生産・画一的サービス提供から個々にカスタマイズされた生産・サービスの提供、②既に存在している資源・資産の効率的な活用、③AIやロボットによる、従来人間によって行われていた労働の補助・代替などが可能となる。企業などの生産者側からみれば、これまでの財・サービスの生産・提供の在り方が大きく変化し、生産の効率性が飛躍的に向上する可能性があるほか、消費者側からみれば、既存の財・サービスを今までよりも低価格で好きな時に適量購入できるだけでなく、潜在的に欲していた新しい財・サービスをも享受できることが期待される。」
平成29年1月内閣府政策統括官(経済財政分析担当)「日本経済2016-2017 ー 好循環の拡大に向けた展望 ー」73頁。
膨大なデータをものすごい速度で解析し、その結果を直接利用するなりAIの進化に使うなりして、今までよりも個別化した財・サービスが適用されるようになる。
そして、その変化の中には、人間が行っていた労働の改廃という変化も含まれる。
おおよそ、こういう風に理解することができる。
AI時代というテーマに焦点を当てるならば、人間が行ってきた労働の改廃という要素が重要となるので、以下では「AIの広がりによって労働の内容や様式が変わること」を「AI時代」とイメージして進める。
AIによって仕事が代替され・生まれ変わる?
「AIによって仕事がなくなる」「AI時代でも生き残る職種」といったテーマの研究や書籍・インターネット上の記事は、今でもよく見かける。
また、「新たな仕事が生まれる」という主張もある。
これらは相互に矛盾するものではなくどちらも起きるのであろうが、何がなくなり何が生まれるのか、決定的な結論はないように思われる。
人事労務に携わるという仕事にしてもそうで、単なる手続的業務は人間ではなくAI(コンピューター?)が行うようになる可能性が高くとも、例えば、人事評価を個別の従業員にフィードバックする業務や、メンタル的な不安や不調を抱えた従業員への対応、ハラスメントの防止や事後処理など、「人間が行う方が価値のある仕事」もあるように思われる。
AI技術の専門家ではないのであいまいな書き方しかできないが、要するに、知識と経験だけで仕事を行うことは難しくなる、ということではないだろうか。
人間一人が記憶している知識量は電子的に記録されたデータの海に比べてはるかに少ないし、個人の経験は膨大なデータの解析と利用によって上書きされてしまう。
一人の経験よりみんなの経験の方が正しいことを受け入れなければ、そもそも経験を基に何かを判断することの合理性・正当性が問われるように思われる。
では、生まれる業務は?
先に引用した「日本経済2016-2017」では、財やサービスの提供が個別化すると説かれていた。
人事労務もその流れに乗るということであれば、いわゆる「個別対応」が求められる業務は今後も残る・あるいは新たに生まれると予想できる。
「労働者の多様化」は、労働法だけでなく、経営学やおそらく経済学でも言われていることであろう。
生活の至るところでパーソナライズされた情報や経験に接するようになることで、雇用においてもそれを求める人が増えるとも考えられる。
AI時代に知識・経験を活かすための理論
ただ、個別対応が必要な場面というのは、今はまだイレギュラーな事態が多いであろう。
何かトラブルがあったときというのが、その典型で、それだけを仕事にするというイメージではない(量が増えることが良いことともいえない)。
また、人事労務のプロフェッショナルとして、やはり知識や経験を活かしての仕事が、個人的にも社会的にも求められる。
そうすると、知識や経験をいかに活かすか、という検討を行うべきと言える。
知識や経験に何をプラスするか、という点である。
これは、やりたいこと・得意なこと、やりたくないこと・不得手なことが人によって違うため、千差万別である。
ただ、知識や経験に、それを支える理論を追加するということは共通して求められるのではないだろうか。
目の前にある問題に何らかの答えを出すだけが個別対応の意味ならば、いずれAIに代わられてしまうように思う。
AIなど使わなくとも、すでに、個別対応の相手が「ググる」ことによって一定の答えを持っていることも多い。
そうではなく、個別対応が「共に悩みながら答えに向かう」ことであれば、まさに人間が行う価値があるのではないだろうか。
共に悩むためには、選択肢をできるだけ増やしていかなければならない。
A・B・C…とできるだけ多くの選択肢を見つけ出し、それぞれのメリットやデメリット、相手の感情などを考慮しながら絞り込んでいく作業が必要である。
この作業には知識や経験ももちろん必要であるが、それを支える理論が特に重要である。
例えば、相手がAという希望を持っているときに、それがそのままでは法律上取りえない選択肢だったとする。
この問題に対し、「Aは法律上できませんが、B・Cならできる」と回答したい。
その際、Aができないことを相手にわかってもらうためには、Aに関する法律を知っているだけではダメで、「なぜダメなのか」という理由を説明しなければならない。
それはAに関する法律を理論で説明するということにほかならない。
また、B・Cという選択肢をAとは異なるものとして思いつくことができるのも、A・B・Cを支える理論の力である。
A・B・Cを知識として理解しているだけでは、それぞれを結びつけることができない。
理論もいつかはAIに教え込むことができるのかもしれないが、現状はあまり進んでいないように思われる。
Chat GPTに労基法にある条文の趣旨を聞いても、適切な回答は得られない(今のところ)。
ググるにしてもそうである。
ググって出てきた回答が正しいかどうかという判定はもちろん、情報としては正しくても「あなたのその希望・状況には使えない」ということは往々にしてある。
その結論を踏まえた上で共に悩むには、まず、使えないということをわかってもらわなくてはならない。
二つの例に共通するのは、「選ばなかったことへの説得力と納得」である。
捨てたものほど後悔しがちで、選ばなかったことに積極的な理由をつけることも、実は重要な専門家の役目だと思う。
この考えの基礎に私の経験があるのは確かだが、カウンセリングの理論などとも大きく外れてはいない(理論的に説明できる)。
自分の知識や経験はどのような理論に基づいて説明されるのか、という視点が最重要であり、専門家の価値の源泉・原点ではないだろうか。
ということで、もし興味があれば、書籍や当ブログ(?)で理論に触れてみていただけると幸いです。
最後までお読みくださりありがとうございました。


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